うさぎの学習


その親方さんが、その短い腕を私の肩にかけてきた。


残る片腕は……?


私の胸に……はぁ?


何? 何なの? 何をしてるのですか、ねぇ小さな親方さん?


水割りを作っていた、私の手は止まる。


と、前に座る連れの男が言った。


「親っさん、案外、大きい女、好きやからなぁ~
大きい女と言うよりも、親っさんの好みは、大きい乳か……」


親方さんの胸を触る手は止まる事を知らず……
その上に、私の目の前に顔を近づけてきたではないか!
顔が近い、近過ぎる!


それは……眼鏡ガラスの向こうに見える親方の瞳と私の瞳が、見め合った瞬間だった!


私も咄嗟の出来事だったから……
胸を揉む親方さんの手を払いのける事しか考えていなかった。


その手首を掴み、親方さんの方へと返した……
つもりが……私、力は案外強い方ですから……。


これが、これが大変な事へと……
と気付いた時は後の祭り。

返した反動で、親方さんの手は自分の顔面に当たり、眼鏡がぶっ飛んだ。


ありゃ? ありゃりゃ?





 
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