32回、好きって言うよ。
「あの……」
「ん?」
「茉桜です」
「は?」
「あたしの名前………茉桜、です」
「…知ってるけど」
サラッと言う翼先輩に、えぇっ、と叫んだ。
「知ってるんですか!?」
「……知ってるでしょ。
彼女の名前くらい」
かあぁっと熱が集中する頬。
「何赤くなってんの。
……茉桜」
初めて呼ばれた名前に、心臓がドキドキうるさい。
耳がくすぐったい。
珍しいわけじゃない、どこにでもいるような“茉桜”って名前だけど。
すごく特別な響きに感じた。
真っ赤なあたしを、夕焼けのオレンジが包んでいた。