彼と彼女の場合
――翌日


「おはようございます!」
大きめの声で挨拶をしながら入っていく。


「ああ、AIKAちゃんおはよう」


今日の私は村野愛果じゃなく、AIKA。

ここは都内の撮影スタジオ。

今日は…


女性向け通販カタログの撮影。


私は時々、こうやってAIKAとしてお仕事をしている。
お父さんに頼まれて中学一年の頃からだ。


「とりあえずフィッティング行ってもらっていい?」
マネージャーの馬渕さんに言われて、奥の部屋へと向かった。


「おはようございます!」

ここでもハキハキと笑顔で挨拶。

これが一番重要だと散々たたき込まれたから。


「あっ!おはようAIKAちゃん!よろしくねー」


部屋にはいつものスタイリストの杏さんと、そのアシスタントさんらしき人が何人かいた。
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