【番外編】惑溺 SS集
 
覚えてるよ。
忘れられるはずがない。

ここでリョウに出会い、そして恋に落ちた。
どこまでも深く深く溺れるような苦しい恋。
決して結ばれることはないと思ってた。
叶わない想いだと知りつつ、それでもリョウに惹かれていった。

どんなにリョウを愛したって、リョウが私を愛する事なんてないんだって。
そう思いながらも、どうしようもないくらいあなたに惹かれて溺れていった。

でも今は、こんなにも愛されてる。
そう実感して胸が詰まった。

幸せすぎて苦しいなんて、生まれて初めての感情だった。

「そんな事、リョウが覚えていると思わなかった……」

溢れそうになる涙をこらえながらそう言うと、リョウは苦笑いしながら私の手の中のグラスを取った。

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