【番外編】惑溺 SS集
 
毎年恒例会社の忘年会。

いつも年末の一番忙しい時期、祝日の前日12月22日に忘年会をする、少し空気の読めない私の会社。

日頃の仕事の鬱憤を晴らすように1次会のふぐ料理屋、2次会の居酒屋となだれ込むように店を変えて飲み倒し、ようやく3次会を終え、賑やかなカラオケ屋を出ると、さすがにみんな疲れたようで各自バラバラにタクシーを捕まえ帰路につく。


「お疲れ様です。また会社で」

そういってタクシーに乗り込んだ先輩に頭を下げ、私も帰ろうかなと時計を確認すると、同僚で仲のいい沙織に後ろからガッシリと肩を掴まれた。


「由佳ー!何、時計なんか見てんの。
まさかもう帰る気?」

二酸化炭素よりアルコールの濃度の方が高いんじゃないかってくらい、お酒の匂いのする息を吐きながら、沙織は私を睨んだ。

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