宝物〜絆〜
 秀人の指が示している先は私の部屋の右隣り。

 ええ? これまた偶然に隣なんですか。そうですか。もう驚きを通り越して何も言えません。

「偶然って重なるよな」

 妙に冷静になった私。

「だな」

 秀人も冷静に返してきた。

 私は玄関の鍵を開け、中に入るよう促した。

「どうぞ、上がって」

「おっ邪魔しま〜す!」

 秀人はテンション高めにそう言うと、スタスタと行ってしまう。

 おいおい。ここは私の部屋、つまり、仮にも年頃の娘の部屋なんだぞ? 何の躊躇いもなく、ズカズカ上がってかないでくれ。

 という脳内での突っ込みが届くはずもなく、秀人は一番奥の左手のドアまで行ってしまった。

 そのドアの先がキッチン兼、リビング。部屋の造りが一緒だからこそ成せる業である。

 ドアを開けて、目の前から右手奥にかけてリビングがあり、ドアから見て少し左手にあるカウンターを挟んでキッチンという構造になっている。

 リビングの床はフローリング。部屋の中央に白い羽毛の絨毯を敷いて、その上にガラス製のテーブルを配置。そして、その前に空色の二人掛けのソファが一つ。

 インテリアどころかテレビや時計さえ置いてないのは、切り詰めた節約生活を送ってるから。
< 13 / 475 >

この作品をシェア

pagetop