BirthControl―女達の戦い―
「遥ちゃんも来るかい?

一人も二人も同じようなもんだし

まあ後、五年間だけしか保証は出来ないけどね?」


そう冗談ぽく言った丸山の言葉は、それとは反対に重いものだった。


あと五年で丸山は70歳を迎える。


そう……


その時には丸山先生も、この施設の住人になるのだ。


「いえ、私は遠慮しときます

私にはここで住み込みで働く義務がありますから……」


安心させようとにっこり笑ってそう言うと、丸山は悲しそうに遥香を見た。


「遥ちゃん、そんなに自分を責めちゃダメだ

あれは仕方なかったんだから……

誰のせいでもない

時代のせいなんだよ」


諭すようにそう言った丸山の気持ちは痛いほどわかる。


でも……


「それでも私は両親を許すことができません

だから、少しでも高齢者や辛い思いをしてる女性達の役に立ちたいんです

それが……

私があのとき、何も出来なかったことへの償いになると思うから……」


遥香の言葉を聞いて、丸山は小さく溜め息をつくと、仕方ないというように優しく言った。


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