BirthControl―女達の戦い―
「稲田先生、そのお話はお控えになってください」


秘書ごときに諭されたのが気に入らなかったのだろう。


稲田は声を荒げて夏木に詰め寄る。


「控えろとは何様のつもりだ?

麻生くんの娘をOldHomeに入れてやるよう口を利いてやったのはこの私だぞ!」


瞬間!要と梨央はピクッと反応した。


(遥香がOldHomeにいる?

あいつ……やりやがった)


要の顔に思わず笑みが溢れる。


梨央も同じ思いだったんだろう。


見ると静かに笑みを浮かべていた。


そしてすかさず稲田に声をかける。


「あら、麻生先生のお嬢さんはあの施設にいらっしゃるんですか?

稲田先生のお口添えってことですけど、住んでいる高齢者の方たちのお世話でもされているんですか?」


梨央の質問に答えようとした稲田を遮るように、ものすごい形相で夏木が怒鳴り付けた。


「口を慎みなさい!

お前たちごときが、知るような話じゃない!」


夏木とは対照的にその隣で麻生は諦めたような顔をしている。


「まあまあ、いいじゃないか

麻生くんの娘は志が高いと、私もあの頃は感心したものだよ

父親が携わってる政策の一部を担おうなんて、涙ぐましい話じゃないか」


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