BirthControl―女達の戦い―



いつものように花壇の花々を愛でながら、久枝は最近の遥香を思う。


先日、丸山が往診に来てからというもの、遥香の様子が明らかにおかしいのだ。


他人にはわからなくても、久枝の目はごまかせない。


もしかしたら丸山に何か言われたんだろうか?


遥香の過去を知る久枝は、彼女がここに来たばかりの頃を思い出した。


強い意思をもつ彼女の瞳に時々宿る悲しげな色。


明るくここの住人に接する反面、自分の心は閉ざしたままだった。


唯一、月に一度往診に来る丸山には自分を見せているように感じたのは、遥香がここに来てから何回目の往診の時だったか……


丸山は久枝が来るずいぶん前からこのOldHomeの施設医をしているが、いつも住人やスタッフを気遣い、優しく接してくれていた。


施設医というくらいだから、上層部と同じように横柄な態度で診るものだと思っていた久枝は、丸山の物腰の柔らかい態度に驚いたのを覚えている。


ここで働く女性達を悲しい思いで見ていたのは、自分だけじゃなかったんだと心強く思ったのも丸山が初めてだった。


今の政治についてや、元気のないスタッフのことについて、診察室では飽きたらず、食堂にまで誘ってよく話し込んだものだ。


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