BirthControl―女達の戦い―
「では後ほどまた」


久枝がそう精一杯の嫌みを投げかけると同時に、カプセルの蓋がシュンと閉じた。


透明な蓋の向こう側では、青柳が複雑そうな表情を浮かべている。


どうやら思いの外、嫌味は青柳の心に響いたようだ。


これから自分が人殺しをするということを再認識したのかもしれない。


明らかに動揺しているような様子に、最後に青柳の良心に少しでも訴えかけることが出来たのかなと、久枝は嬉しくなった。


そんなことくらいで、この作業をやめることはないだろうが、これから先自分がやっていることに疑問を持ってくれたらと思う。


久枝はそんなことを思いながら、最後の小型カメラを自分の手が届く場所にそっと置いた。


これで久枝の様子も伝わることだろう。


あとは遥香たちに託すだけだ。


これがうまく行けば、世間は黙ってはいない。


特に虐げられていた女性たちは立ち上がるきっかけになるかもしれない。


これからOldHomeに入居予定だった高齢者たちも異論を唱えるに違いない。


自由を手に入れたこの国の未来を、自分の目で見ることが叶わないのは残念だけれど……


ふと気が付くと青柳の姿はもう久枝からは見えなくなっていた。


(……そろそろかしらね?)


そう思ったのと同時に、久枝は呆気なく意識を手離した。


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