BirthControl―女達の戦い―
まっ、それはそれでみんなとコミュニケーションを取りに行けるからいんだけどね、と言って梨央は軽くウィンクをした。


確かに梨央はこの数ヶ月間で、施設の住人の顔は全て覚えていた。


誰一人として健康状態の変化を見逃したくないというのが、梨央の自分へ課したここでのルールだった。


おかげでここ最近はかなり医療費が減っているのではないかと思われる。


そう簡単にはいかないだろうが、ほんの僅かでも目に見える変化があれば、人は頑張れるんじゃないだろうか。


梨央が踵を返して建物の方に歩き出す。


「やばっ、先生、体操の時間始まっちゃう!」


どうやら体を動かす目的で始めたストレッチは、毎朝同じ時間に組み込んだらしい。


哲朗と敬子は顔を見合わせて、梨央のやる気を喜んだ。


ここには今、笑顔が溢れてる。


梨央の後を追いながら、ふと何かを感じて振り返った。


一瞬……


ほんの一瞬だけ遥香が笑っているように見えた。


その幻は……すぐに消えてしまったけれど……


なんだかみんなが笑ってる姿を遥香が喜んでるような気がして、哲朗は墓碑にとびきりの笑顔を向けた。

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