BirthControl―女達の戦い―



窓を開けると、ひんやりとした空気が、中の暖かい空気と瞬時に入れ替わった。


暖房のせいで少しボーッとしていた頭が、途端にすっきりと晴れやかになる。


しばらく窓を開けたまま外気を胸に吸い込むと、眠気も飛んでいってくれるようだ。


うーんと伸びをして、庭の木を見つめる。


(もうすぐ桜が咲くんだなぁ……)


小さな蕾が膨らんで、息吹が聞こえてきそうなその様子に、百合子は目を細めた。


もうすぐ長かった冬が終わり、暖かい春がやってくる。


新しく生まれ変わるこの施設にも、希望という名の暖かい春は、やってくるんだろうか?


「百合ちゃん、寒いよ」


振り返ると、OldHome時代からの住人であるおばあちゃんが、自分で自分を抱き締めながら寒そうな顔で笑ってる。


「だめですよ

ちゃんと空気入れ換えなくちゃ」


こちらもにんまり笑いながらそう言うと、彼女は肩をすくめて仕方ないねぇ、と奥へと引っ込んでしまった。


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