西澤さんと文子さん

「一度会ってゆっくりお話がしたいです。都合のいい日ありますか?」

「え・・・えっと・・・今週の土曜日なら大丈夫です。」

「そうですか。じゃ、その日の朝10時でいいですか?」


「は、はい。」



数分間、携帯越しに伝わってくる声。その声を聞いた瞬間、文子は自覚した。



自分は恋をしたのだと・・・。


それは、西澤も同じだった。文子の声を聞いた瞬間、携帯を持った手が少し小刻みに震えだし、いつもとは違う緊張感が身体を支配していく。そして、電話を切った瞬間、文子の声を脳裏に刻んでいく感覚と元に戻らない心拍数・・・。西澤は感じたことの無い感覚に数分間浸ってしまう。それを恋と悟るまで時間がかからなかった。



数日後の土曜日、朝10時

彼らはこの日が待ち遠しくなった。


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