【超短編】傘とアリガトウ



そうとなれば、考えられるのは一つ。
上に誰かがいる、という事。

確か上の階は先輩の教室だったような…、不思議に思いながらも上を見上げれば、自分と同じように窓から顔を突き出した先輩がいた。
唯一自分と違うのは、傘を差している、という事。

「…折角、気持ち良いなとか思ってたのに。何なんだよ。」
ボソッと呟いて、先輩にクレームの一つでも言ってやろうと思い、窓を閉め上の階へと、上がって行った。


全開の教室の引き戸から、中を見てさっきの先輩を探す。
ちょっとした、宝探しか謎解きのように思えたのは、気のせいか。
端から順に探し、校舎の丁度中央に位置する教室に、

その人は居た。

まだ、傘と顔を外に突き出している。


「…シツレー、シマス。」
先輩とはいえ、生徒への敬語ほど変な感じのするものは無い。
多少投げやりだが、その辺は気にしないで欲しい。


「アハハッ、やっぱり来ると思ったー」
なんとも言い難い、テンションに引きつつ、言いたい事だけ言い放つ。

「あの、傘「雨なのに、濡れたら風邪引くよ?」……。」
どうやらこの先輩、ご親切に心配していて下さったようだ。
明らかに、今まで接してきた人の態度とは違う話し方に、ペースが乱される。
「だから、「あ、もしかして傘持ってなかったりする?」…ハイ。」

投げかけられた質問を無視する訳には行かず、答えた、ら…。

「じゃ、一緒に帰ろうよ。」

丁度傘持ってるし、と先輩。
2本持っているのか? それでも嫌な予感しかしない。



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