【短編】白い息に君への想いを
白い息に君への想いを
寒い寒い雪の日の帰り道。

息を吐く度、白い息が空へと昇る。

天から舞い降りてくる雪は地面に辿りつくと、そっと消えていく。

まだ、降り積もる程の量ではないが、天気予報で夕方から明日の朝まで雪が降ると言っていた。

明日の朝、登校する時はまた、大変そうだ。

コートを羽織り、マフラーを巻いて、手袋をしていると言うのに寒くて寒くてたまらない。

それなのに、雪まで降り積もるだなんて最悪だなとか、ぼーっと考えながら歩いていたら、何処からか声が聞こえた。


「もう、あんたなんか大っきらい!!」

「おいっ! ちょっと何処行くんだよ!?」

男女が叫ぶ声が公園の方から聞こえる。

嗚呼、これはカップルの喧嘩か。

女の人が泣きながら公園を出ていき、溢れ出る涙を冷たそうな赤くなった手で拭きながら、
去っていく。

男の人の方は、情けない顔をして、その場にうずくまっている。

そのうち、その男の人が此方に視線を移し、思いっきり目線が合う。

困ったなぁとか思っていると、向こうから視線を外してくる。

見るつもりはなかったとはいえ、罪悪感と言う名の雪が心の中に降り積もる。

可哀想だなぁとは思ったけど、関係ない話だと言えばそうだし、此処は気付かなかったフリをして帰ろう。

そしてまた、歩みを進めようと一歩踏み出す。




< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop