ひだまりHoney
「なんで、持ってねぇんだ! 雨ふるって……ひっく……言ってた、だろ!」
確かに私は傘を持ってない。
そして、目の前の酔っ払いも持っていない。
持ってないくせに、説教口調で近寄ってくる。
「こ、こないで」
体感温度が下がっていく。体の中まで急速に冷えていく。
恐怖に覆い尽くされそうになる。
「ど、どいてください」
「あぁっ!?」
酔っ払いの後方に目を向ける。早くしないと紺野さんが行ってしまう。
動けない自分と動きたい自分が、体の中でせめぎ合っている。
「傘、買ってくれってか? ただでかえっていうのか?」
肩に骨張った手が乗せられた。不躾なその手に、気持ち悪さが込み上げてくる。
「は、はなして」
「わかった! 買ってやる! 買ってやるから、おれの話をきいてくれ」
公園の出入り口で紺野さんが右折する。