理想の恋愛関係
光の差し込むリビングのソファーに、お母さんはぼんやりと腰掛けていた。


リビングの扉が開いた事に気付いたはずなのに、振り向きもしない。


「母さん、緑さんが来てくれたよ」


優斗君が声をかけると、お母さんはようやくゆっくりとした動作で顔を向けて来た。


焦点の合っていない目。


優斗君は楽しく会話して欲しいって言ってたけど……これは厳しいかもしれない。


お母さんは以前会った時より痩せていて、暗い空気を纏っている。


簡単に和むとは思えない。


でも……ここで頑張らないと、優斗君との関係が……外堀計画が……弱気になってる場合じゃない!


私は気合いを入れる様に手を握りしめて、一歩前に進んだ。


「お久しぶりです。
今日はお招き頂きまして、ありがとうございます」


笑顔を浮かべながら挨拶をすると、お母さんはぼんやりとした表情のまま頷き言った。


「緑さん、綺麗な花をありがとう」


「いえ、少しでも明るい雰囲気になったらと思って……気に入って頂けて嬉しいです」


いきなりの好感触に、私は浮かれた気持ちになりながら言った。


けれど、


「優斗とはもう関係無くなったのに、気を遣って貰ってすみません」


続いた他人行儀な言葉に、一気に気持ちが沈没していった。


関係無くなったって……お母さん、情報が古いです。


そう言いたい気持ちでいっぱいになっていると、優斗君が会話に入って来た。

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