理想の恋愛関係
「え……そんな事は……」

「いや、歩いてるのが不思議なくらいだった。
競歩のレベルだよ」


優斗君に言われ今更のように周囲を見回してみると、確かに大分進んで来ていてもう既に駅の近くだった。


現実から逃げたい気持ちから、無意識にかなりのペースで歩いていたのかもしれない。


でも……それより気になるのは優斗君がどうして追って来たのかと言う事。


さっきの事で怒られるのか、それとも妄想が現実になるのか……恐ろし過ぎて、このまま振り返り逃げ出したいくらいだった。


不安のあまり挙動不審になる私に、優斗君はスッと腕を差し出して来た。


「……あの、優斗君?」

「忘れていったよ、カウンターの上に置いて有った」

「え……!」


よく見ると、優斗君の手の中には私の腕時計が有った。


洗い物をする時外して、そのまま忘れてしまったんだ。


「……ごめんなさい、迷惑かけて」


重なる失敗に、私は項垂れながら言った。


「気にしないでいいよ、追って来たのは緑さんに話が有ったからってのもあるし」

「は、話……」


ビクビクする私に優斗君は頷き言った。


「さっき家で言おうと思ってたんだけど、声をかける前に緑さんが出て行ったから……あまりの素早さに止める暇が無かった」

「そ、それで……話って……」


緊張に耐えきれずに先を促すと、優斗君はなぜか小さな笑みを浮かべながら言った。

< 220 / 375 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop