理想の恋愛関係
「遅れて、すみません」


大して悪いと思って無い様な顔で、優斗君は言った。


まあ、たったの10分だし仕方ない。


「私も少し前に来たところだから」


気を遣わせないように言うと、優斗君は私の嘘には少しも気付かずに頷いた。


「今日は植物園に行くんですよね?」

「そう、ここからそんなに遠くないし、いいかなと思って。お弁当も持って来たわ、中で食べられるから!」

「お弁当?」


優斗君は眉をひそめながら、私の大きなバッグを見た。


「……早く行きましょう」


お弁当に関して何の感想も無く、優斗君は背中を向けて改札口に向かって行った。


電車の中でも、一方的に私が話すだけで会話は全く弾まない。


さすがに落ち込んで来た頃、やっと植物園に到着した。




「優斗君、こっちよ!」


気を取り直して、門に向かい小走りに向かった私は、異変を感じて足を止めた。


人気の無いチケット売り場、それに……。


「……門、閉まってるけど」


嫌な予感に立ち尽くしていると、呆れた様な優斗君の声が聞こえて来た。
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