理想の恋愛関係
「つまりはまた振られちゃったって事？」


私の話を聞いた鈴香は、少し大袈裟なくらい驚いた声を出した。


遠慮無しにはっきり言われ気分は良くなかったけれど本当の事だから頷くしかない。


「実質的には……私からは連絡しない約束だから……優斗君から連絡が来たら会えるけど……」


溜め息混じりに言うと、鈴香は間髪入れずに短く言った。


「来ないでしょ」

「……」


私だって分かっているけど、僅かな希望に縋りたい。


本当に限りなく低い可能性だろうけど。


「ねえもういい加減、彼は諦めた方がいいよ。彼も迷惑だと思うよ」

「……そんな事分かってるわ」

「分かってないと思うけど？ 緑、客観性を失ってない？」


鈴香は呆れた様に言う。


「緑が心配だから、はっきりと言ってるんだよ？」

「……」

「このままじゃ幸せになれないよ。彼の事は忘れて緑をちゃんと見てくれる人と付き合った方がいいよ」


鈴香は本当に心配してくれている。


それだけに私の諦めの悪さに苛立っているようだった。


私だって自分で何をやっているんだと思う。


何でこんなに割り切れないのか不思議で仕方ない。


今までなら、一度でも裏切られたら迷わず別れられたのに。


忘れようと思っても、ほんの僅かだけ見せてくれた優しさばかりが思い浮かんで辛くなる。


「冷静に考えれば嫌な事の方が多かったはずなのに、なぜか嬉しかった事ばかり思い出すの」


そう言うと鈴香は複雑そうな苦笑いを浮かべた。


「前向き過ぎるよ。普通は傷付けられた事こそ忘れられないものなんだよ」

「……そうね」


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