理想の恋愛関係
「大失敗だね」


帰りのタクシーの中、鈴香は呆れた様子で言った。


「……」

「何で、あんなにムキになったの? 龍也の言う事なんて、まともに取り合う必要無いのに」

「優斗君の事悪く言うから、ついカッとしちゃって……龍也が優斗君に嫌がらせでもしたらって思うと黙ってられなかったのよ」

「龍也だって取引先の上役に馬鹿な真似はしないでしょ? あれで出世欲は有りそうだし、自分が不利になる行動はしないと思うけどね」

「そうだといいけど……」


でも龍也は、私の不名誉な噂、それも嘘の噂を故意に流す男だし、全く信用出来ない。


「それより自分の事を心配しなよ、また龍也と揉めたんだから。
嫌がらせされる心配が有るのは緑だよ」


確かにそうかもしれないけど……それなら逆に気が楽だと思った。


優斗君に迷惑かけたり、嫌な思いをさせてしまうよりはずっといい。


そう考えると気持ちが軽くなる。
でもその直後、鈴香の現実的な言葉でまた気持ちが暗くなった。


「まあ……もう二ノ宮優斗の事は記憶から消しなよ。彼の噂を聞いていちいち感情的になっても仕方ないでしょ?
緑にはもう関係無い相手なんだから」


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