明日の果て

 そうして剛は、かつて浸食を共にしていたマンションに足を向ける。

「……」

 入り口から外観を見上げ、自動ドアを見つめた。

 ゆっくり足を踏み入れると、鍵のない剛に暗証番号を入力するテンキーが冷たく見つめてくる。

 ポストには当然、デイトリアの名前は無い。

 切なげにそれを見やり、外に出た。

 剛は次に、スマートフォンを取り出しデイトリアがかつて翻訳を手がけていた出版社に電話をかける。

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