Secret Lover's Night 【完全版】
メーシーに手を引かれてリビングへと入って来た千彩は、お姫様と言うよりは花嫁。
純白のドレスを身に纏い、ご丁寧にベールまで着けているものだから、もう晴人にはそれにしか見えない。

「はるー、ちさお姫様になったよ!」

それにまた嬉しそうに千彩が満面の笑みを見せるものだから、晴人としてはいつまでも黙りこくっているわけにもいかない。

「あれ…どないしてん?」

漸く押し出した言葉に、恵介がニカッと笑う。

「ちーちゃんが着てたドレス、リメイクしたんや。力作やで」
「ドレスて…あぁ、あれか」

初めて会った日に千彩が着ていた、白いオフショルダーのドレス。レースが付き、フリルが付きとしてかなり手の込んだものになっているけれど、言われてみればそうかもしれない。さすが恵介。と、素直に称賛の言葉を口にした。

「実はこのベール、麻理子のお手製なんだよね。慣れない裁縫に悪戦苦闘しながら頑張ってたよ」

自慢げに言うメーシーが、何だか憎らしい。

「ほら、王子。固まってないで姫をエスコートして」

そう促され、視線はそのままに千彩の手をそっと取る。丁寧にメイクの施された顔ではにかむ千彩は、今までに見たどんな千彩よりも綺麗で。ただただ感嘆の息を吐きながら黙って千彩を見つめる晴人の肩に、両側から友人がポンッと手を乗せた。

「俺らからの祝いやで」
「は…?祝い?」
「そっ。二人の結婚祝い」

ここでも急かされるか…と、ほとほと嫌になる。
けれどそれ以上に、今目の前ではにかむ千彩が愛おしくて。そっと両手を取り、気恥かしさからコツンと額を合わせて晴人は言った。


「千彩、俺と結婚してくれる?ずっと二人で幸せ守ってこ」


人生の一大イベントであろうプロポーズを、まさか友人の前でするとは思わなかった。けれど、今ここでしなければ男が廃るというものではないだろうか。


「ちさと結婚してください。はるとの奥さんにしてください!」


少しも躊躇うことなく出された答えに、堪らなくなってギュッと抱き締めた。
グッと唇を噛みながら、じわりと溢れる涙を堪える。
改めて幸せの意味を噛み締めながら、晴人は誓った。必ず、何があってもこの幸せは守り抜く、と。
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