いとしのくまこさん
「この間のクマの件だけど」


「それが何か」


「伊吹くんてそういう趣味なんだなって。かわいいじゃない」


ぐいっと喉をならして飲み干すと、力まかせに自販機の隣にあったごみ箱に投げ捨てた。


「誰だって胸の中に秘密の拠り所、あるんじゃないですか。熊井さんだって、あるんでしょ。ひとつやふたつ。今ここで言えますか?」


「それは……」


「明日の締め切りにあげなきゃいけない原稿があるんで。失礼します」
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