いとしのくまこさん
机の下に置かれたカバンから財布を取り出すと、伊吹くんにお昼買ってくるわと告げて部屋を出た。


エレベータを降りる。一階のロビーに歩みを進めると、通用口へ向かう姿があった。


白髪まじりの短髪。


わたしよりも長身で、今日は茶色のスーツを着ている。


付き合いはじめの仕事帰り、その広い背中に何度も抱きついたかしれない。
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