いとしのくまこさん
「熊井さん、どうかしましたか」


怪訝そうに伊吹くんはわたしをうかがっていた。


「あ、いや。ごめん……」


「何をあやまってるんですか」


「こっちのこと、こっちのこと」


「二番に配信センターの篠崎さんから電話入ってますけど」


怪訝そうにメガネフレームの位置を直すと、パソコンの画面に目をうつしていた。


いかんいかん、うつつを抜かしてちゃあ。


机の上に置いてあった缶コーヒーを飲み干すと、赤いランプが点滅したボタンを押し、電話に出た。
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