いとしのくまこさん
聞きたくない黄色い声がする。


エレベータとロビーを結ぶ広い廊下に、姫川が何かを人差し指と親指でつまんで持っている。


目をこらすと、茶色のクマのストラップだった。


「ちょっと、何してんのよ」


しかたなく姫川に近づく。


「熊井センパイ。あ、これ」


「返しなさいよ」


ヨレヨレになったクマを鷲づかみにする。
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