魅せられて
第四章誘惑


折れ曲がったカウンター
二個並びの椅子


弓状に弧を描く
ボトル棚との境目に
滑らかな曲線の壁があり


カウンターの隅に座る
”高梨”は よく
その敷居に寄り掛かり
グラスを揺らしていた


隣席に誰も居ないと
意味なくライターを鳴らし
静かに酒を飲む男


週始めは 若干だが
常連客も少なく
カウンター席も空席がある


グラスを丁寧に磨くマスター


照明に照らし
グラスの陰りを確認する
ゆっくりとした動きを
眺めていると


煌くグラスの越しに
高梨の姿が見え


僅か数メートル先の
カウンター席なのに
果てしなく遠く感じ


目障りな男の癖に
魅入られてしまう


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