その指に触れて
「山田くん、今回のテストも一位だって」

「うわ、凄いなあ。私達とは次元が違うよね」

「どこで仕入れたの? その情報」

「四組の人達。山田くんって、仲良しの人と成績を公表すんだって。大声ではないけど、周りの人達が聞いちゃって、それで広まるみたい」

「……いじめ?」

「違うと思うよ。毎回山田くんと友達がお互い言い合ってるから。『遥斗、今回も一位かよ』『お前は相変わらず下から三番目かよ』みたいな」

「…………」


それ、友達が可哀相だぞ。


「万梨子、山田くんから何も聞かないの?」

「何も。あいつ、あたしに言いたがらないから」


あたし、成績悪いように見えるのかな。


そりゃあ、遥斗からすればあたしなんて屑みたいに思われるだろうけど。一応、半分以下の順位になったことはないんだからね。


「……万梨子」


汐香があたしを見て瞳を輝かせている。


ああ、悪い予感しかしない。


「大事にされてんじゃない?」

「は?」

「言わないんじゃなくて、言えないんじゃない?」

「……何それ」


汐香、あなたの思考に着いていけません。


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