その指に触れて
季節は既に初冬。遥斗と出会ってから三ヶ月近くが経っていた。


11月半ばになると冬の制服でも肌寒く感じられる。


それでも女子の制服のスカートは短いまま。あたしも夏と変わらずスカートを二回折ったまま過ごしている。


遥斗は意外にも制服を若干着崩していた。ワイシャツの第一ボタンを外し、ネクタイを若干緩めているくらいの、ぱっと見では全然わからないけど。


その遥斗の着方はあたしは好きだった。首回りの肌がちらっと見えるから。


「罪な男だよ、あんたは」

「何の話?」


数学的帰納法の説明を終えて、両手を上げて伸びをしている遥斗がこちらを見る。


「男子の制服に欲情する女子、そうそういないわよ」

「それは万梨ちゃんの感覚が変なんだと思うけど」


にっこりと笑って言うもんだから、あたしはその笑顔は反則だと睨みつける。


口じゃ何も言えなくなる。


王子様、とまではいかないけど、遥斗ならばアイドルとなればいい方だろう。


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