その指に触れて
それからほぼ毎日彼の部屋に入り浸るようになった。


だからって何か特別なことが待っているわけでもなかった。


そのころは既に中学校を卒業していて、進学先も決まっていたし、とりあえずすることがなかった。


あたしと彼の進学する高校は違った。


あたしは進学校。彼は滑り止めの私立校。


彼の部屋で学校にいたころのように時間を忘れていつまでも話して、時々キスをする。


それだけだった。


でも、次第にキスをする時間が長くなっていることに、あたしはそう対して時間をかけずに感じ始めた。


あたしは初めてキスをした時から、キスという行為が好きではなかった。


唇を重ねて何になるの?


彼とキスをしながら、いつもそう思っていた。


でも拒めなかった。彼が求めてくるから。


彼が好きだったあたしは、彼に嫌われたくなかったのだ。


< 17 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop