その指に触れて
あたしは目を覚ました。


「う……」


気持ち悪い。


胃液が喉をせりあがり、すっぱい味がした。


起き上がる。見慣れた、自分の部屋だった。


あたしは布団から出て、冷蔵庫からペットボトルの水を取りだしてそれを飲み干した。


気持ち悪かった上に、全身が汗ばんでいることに今気づいた。


「気持ち悪……」


思わず呟いていた。


一人暮らししてもまだ引きずっているのか、あたしは。


部屋に戻って時計を見る。まだ朝の五時前だった。


携帯を開いてアドレス帳を表示させる。


『山田遥斗』の文字を見た瞬間、泣きたくなった。


ほんと、ばかだよな。


大学生になって半年経っても忘れられない。アドレス帳の遥斗の文字を消すことができない。


あたしは縛られているのだろうか。遥斗と晃彦に。


情けない。さっさと忘れてしまえばいいのに。


……忘れられないなら、さっさと会いに行けばいいのに。


あたしは携帯をベッドの上に放り投げる。そして、クローゼットから服を取り出した。


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