その指に触れて

いかん、いかん。思わず熱く突っ込んでしまった。


この送り主は一体誰よ？　少なくともあたしのアドレス帳にいる人じゃない。宛先が名前じゃなくてメールアドレスで表示されてるから。


男？　女？　どっちにしろ気持ち悪いけど。


体は身震いするほどなのに、携帯を握り締めている右手はじっとりと汗をかいていた。とりあえず今は夏なのだ。


ああ、めんどくさいなあ。


下手に返事をしたら、おもしろそうだけどめんどくさくなりそうだしね。


消していいよね？


送り主とゆみちゃんには悪いけど、この二人の問題だし。自分にふりかかる面倒事にも関わりたくないあたしは、他人の問題なんかもってのほかだ。


右の一番上のボタンを押す。「メニュー」が現れて、スクロールさせて「削除」の欄で決定ボタンを押した。


携帯を閉じて、あたしは部屋から出た。


この時、あたしは気づくはずもない。


今押した「削除」が終わりではなく、始まった合図だということに。