その指に触れて
「初めてのキスはあっちから?」

「んー」

「誘惑は早かった?」

「……まあ」

「初めては何週間で?」

「……万梨ちゃん」


遥斗がスケッチブックを動いていた手を止めてあたしを見た。


「ん?」

「そこまで答える必要ある?」

「遥斗が答えるから。あ、もしかして」

「え?」

「まさかのまだ童貞とか」

「違うから! 卒業したから!」

「……へー」


あたしが冷めた目で遥斗を見ると、遥斗ははっとして頭を抱えた。


「何カミングアウトしてんだ、俺……」

「いいじゃん、高二で童貞卒業とかけっこうレアだよ」

「いや、一年の時だけど」

「更に絶滅危惧種!」

「ああ、またカミングアウトしちゃったし……」


だからうまかったのか。


妙に納得してしまった。


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