この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

それから私と赤毛さんは色んな話しをした。


ほとんどが彼の生い立ち。小学校の時は赤い髪のせいで随分、イジメられたそうだ。


思い出したくもない辛い過去を話してくれるのは、私を慰める為?


「誰でも嫌なことはあるさ。でもな、時間が経てば笑って話せるようになる。あんまりクヨクヨすんな!」

「……うん」

「そうだ。いいモンやるよ」


ニッコリ笑った赤毛さんがデスクの隣の棚から大きな籐のかごを取り出し、私の膝の上に置く。


「わぁ!」


かごの中には、溢れんばかりの駄菓子が入っていて、思わず無邪気に声を上げてしまった。


「俺の大好物だけど、桃尻ちゃんが元気になるなら仕方ねぇ……でも、3つまでだぞ」

「ありがと」


かごの中を物色し、懐かしい駄菓子を3つ選んだ。


「あぁ~これ、小さい頃によく食べたやつだー」


昔に戻ったみたいで、なんだかやたら嬉しくて……夢中で駄菓子の袋を開ける。


そんな私を黙って見ている赤毛さん。


「その笑顔が、いいんだよ」

「えっ……」


不意に抱き寄せられ、頬に感じる温もり。


「や、やめ……」


離れようとする私の体を更に強く抱きしめてくる。


「……好きだ」

「あっ……」


こなに時に、そんなこと言わないでよ。


既に私の脳みそは、銀のことでいっぱいいっぱいで、許容量は満杯。赤毛さんの"好き"を受け入れる余裕はなかった。


私の思考回路は完全にダウン。メーターを振り切り、オーバーヒートしてる。


「沢村部長と別れろよ」


同じことを同じ日に、ふたりの人に言われた。


「部長とは、付き合ってないよ」

「嘘はもういい。分かってんだよ」

「でも……」

「こんなこと、アンタが傷つくだろうから言いたくなかったが、アイツには女が居る。アンタ、遊ばれてるの分かってねぇんだよ」


遊ばれてる?


「そんなことない。銀は……そんな人じゃない」


赤毛さんの言葉を否定しながらも、私の心は芽生えたばかりの疑惑で揺れ動いていた。


やっぱり、そうなの?

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