この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
さり気なく触れた彼の手の温もりにドキッとする。
なんだか変な感じ……
出張先の香港の話しを聞きながら創作料理を堪能してる間も、この変なモヤモヤとした気持ちは消えなかった。
少し酔ってきた横田さんが不意に私の指に触れ「今度は指輪でもプレゼントしようかな……」なんて言うから、焦ってしまう。
なんか他の話題に持っていかなきゃ……マズい展開になりそう。
「あ、あのですねー横田さん。私、彼氏が居るんですけど……デートで使える様な美味しいお店って知りませんかね?」
「彼氏……?」
横田さんの肩方の眉がピクリと動いた。
「前に会った時は、彼氏は居ないって言ってたよね?」
「は、はぁ、あれから色々あって……彼氏、出来ちゃったんです」
「どんな男?」
さっきまのでの優しい顔をした横田さんはとは、まるで別人みたいな怖い顔で私を睨んでくる。
「どんなって……会社の上司です」
「上司? 仕事もしないで女を口説く男なんて、やめた方がいい」
「あ、いや、そう言われても……一応、仕事は出来る人だし、イケメンだし……」
「男は顔じゃないよ。なんなら僕が品定めしてあげてもいい」
「え゛っ…?」
なんで、そうなるの?
"品定め"に関しては丁重にお断りしたものの、横田さんの機嫌はお店を出て別れるまで直らなかった。
やっぱ、あれだよね……横田さんは私のことが好きなんだよね。
参ったなぁ~最近の私って、凄くモテてない? まんざらでもないなぁ~
他人が見たらドン引きしそうなニヤケ顔でウキウキルンルンスキップしながら駅に向かう。
9時45分か……そろそろ帰っても大丈夫だな。
電車に揺られ、車窓から見える街の明かりを目で追いながら、ふと思う。
華、喜んでいるだろうな……
今度は母親としての笑みが零れる。
「ただいまー!」
勢い良く部屋のドアを開けると銀と華がふたり並んで座り、パソコンの画面を見つめていた。