この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
にこやかに談笑してる美男美女のカップル。男性が女性に優しく微笑みかけ、それはまるで映画かドラマの一場面の様な絵になる光景。
でも、その微笑ましい姿が私にとっては、正に悪夢。
全身が小刻みに震え、血の気が引いていく……
カシャーン……
私の手から滑り落ちたフォークがお皿の上で弾けると甲高い音をたて床に転がった。
「ミーメちゃん? どうしたの?」
目の前の横田さんの声でさえ、耳に届かない。
銀……隣の女性は……
私たちとは離れた席に案内されて行く銀の姿を、ただ黙って目で追う。
銀は女性の背中に手を添え、慣れた感じでエスコートしている。私には見せたことのない紳士的な姿に胸が掻き毟られる思いだった。
淡いブルーのスーツを着た女性は、スレンダーで背が高く、艶やかな黒髪が白い肌を一層際立たせていた。
悔しいほどお似合いなふたり。銀と鳳来怜香さん。
ホントのこというと私はあのメールを全て信じてはなかった。それは、微かな希望……疑う余地は無いと思いながら、心のどこかで銀を信じてたんだ。
でも、この現実を目の当たりにしたら、もう……
私が視線が向けた方向に、同じ様に目を向けた横田さんが小さく低い声で聞いてきた。
「もしかして、あの男が彼氏?」
私はコクリと頷き、スカートを両手でギュッと握り締める。
「出よう……」
「えっ?」
「あんな男が居る場所で食事なんか出来ない。不愉快だ!」
横田さんはレストランの支配人が止めるのも聞かず、私の手を引き店を出る。
そして、誰も居ないエレベーターホールで不意に抱きしめられ、優しい横田さんの声がした。
「ミーメちゃんは、僕が守る。僕が幸せにするから……」