この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

もう私には、お腹の子を産むという選択しかない……そんな雰囲気にされていた。


ママは毎日、私のお腹をさすり「私がママよ~」と話し掛けてる。


そんな訳だから、必然的に高校は中退。高校だけはどんなことがあっても卒業するという銀との約束は果たせなかった。


まぁ、別れた男との約束を律儀に守ることもないか……




――そして、翌年の5月。18歳になったばかりの私は、女の子を無事出産した。


無事と言っても出産の痛みはハンパなく、鼻からスイカという意味が分かった気がした。


超難産だと思ったのに「安産でしたね」と先生に言われた時は意識が飛びそうだった。


これで安産なら難産ってどんなだ? 恐ろしくて想像も出来ない。


そして、産まれたばかりの赤ちゃんを胸に乗っけられた時、その心地いい重みに不思議な感覚を覚えた。


真っ赤になって泣いてる我が子が愛おしくて、紅葉みたいな小さな手が可愛くて、一筋の涙が零れ落ちる。


「初めまして……私がママだよ」


その瞬間、この子を手放すなんて絶対、出来ないと思った。


そのことをママに話すと「話しが違う」と大暴れ。危うく病室を破壊されるとこだった。


でもミミさんが、この子を皆で育てようと説得してくれてなんとか納得してもらった。


そして、子育て経験ゼロだった私たちのドタバタ育児が始まったんだ。


どんなことがあっても、この子だけは幸せにしてあげたい。例え父親が居なくても立派に育ててみせる。


母は強し! だ!



< 65 / 278 >

この作品をシェア

pagetop