この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「もういいから! 座りなさい!」


なぜかご機嫌斜めの橋倉さんに引っ張られ長テーブルの席に座る。


すると、今まで誰も座ってなかった私たちのテーブル席が一気に若い女性社員で満席状態になっしまった。


女性社員の視線が私に集中し、なんか異様な雰囲気だ。


何? この居心地の悪い空気は……


警戒心むき出しの私に、向かいの席に座った女性が話し掛けてくる。


「ねぇ、神埼さん、昔の部長ってどんな感じだったの?」


その一言を皮切りに、周りの女性たちが一斉に喋りだす。


「部長って、なんか謎めいてるでしょ?」


確かに……意味不明だ。


「クールで多くを語らないけど、部下の私たちのこと良く見ててくれて、絶妙なタイミングでフォローしてくれる最高の上司よ」


へぇ~そうなんだ。


「女嫌いって噂があるけど、ホントなの?」

「女……嫌い?」


私の知る限り、そうでもないと思うけどなぁ~


「だってね、誰がアプローチしても全然興味なしって感じで
スルーされちゃうのよね。部長の好みのタイプ知ってたら教えてくれない?」

「好みのタイプか……」


その時、銀に初めて抱かれた時のことが脳裏を過ぎった。


「――可愛くない女……」

「えっ? 可愛くない女?」


そう、銀は確かにそう言った。


"可愛くねぇなぁーまぁ、そんな女だから惚れたんだけどな"


遠い過去を思い出していると突然、誰かが私の肩を叩く。


振り返ってみれば、今朝、私を部長室へ案内してくれたあの色っぽい女性が立っていた。


「そうなの? だから部長はあなたを自分の補佐にしたのね」

「はぁ?」


彼女は私を見下ろし薄ら笑いを浮かべながら長い髪をかき上げる。


「部長は色気のカケラも無い女性がお好みってことなんでしょ?」


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