この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「ヤ……だ」

「フッ……嫌な割には、随分熱いよな?」


私の真っ赤になってるであろう頬を両手で包み、そう言う銀に、私は素直になれない。


「新陳代謝がいいんだよ!」

「ほ~っ、健康的だな」


笑いを堪えながら私から離れていく銀。


「じゃあな」


軽く手を上げ、部屋を出て行く銀を見送ると私はまだ落ち着かない心臓を押さえ大きなため息を漏らす。


どうしてこんなにドキドキするのよ。心臓のバカ!



    *****



メイクを直し、タイムカードを押した時間は9:40。せっかく早めに出社したのに、また遅刻だ。隣の橋倉さんの視線が痛い。


「神埼さん、2日続けて遅刻って、どういうことかしら?」

「あぁ、すみません。ちょっと事情がありまして……」

「事情とは?」

「えっと、あのですねー……会社のビルを入ったとこで部長にバッタリ会いまして、どうしてもシャケのおにぎりが食べたいって泣きつかれまして……仕方ないからコンビニ行ってたんです」

「部長がシャケのおにぎり食べたいって泣きついた?」

「え、ええ、ホント、困った人ですね~」


全ての責任を銀に押し付けてやった。


「そう……シャケねぇ」


橋倉さんは、おまじないみたく"シャケ"というワードを繰り返し呟いてる。どうやら誤魔化せた様だ。


ホッとしていると私のデスクの内線電話が鳴った。


「はい、神埼です」

『――俺だ』


銀かよ。


『今から言う資料を揃えて俺のとこに来い。出掛けるぞ』


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