この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

キス……してる。私、銀とキスしてる。


身動き一つ出来ない体。破裂しそうな心臓。熱く火照る頬。大きく見開いた瞳は閉じることが出来ない。


拒むことさえ忘れ、ただただ、銀の唇を受け入れてる私。


「忘れろ……」

「んんっ?」

「ハナコの父親のことなんて忘れちまえ。それが、俺のして欲しいことだ」


銀……


濡れた髪から零れ落ちる水滴と、激しく押し付けられる銀の唇で息が止まりそう。苦しくて反射的に顔を逸らそうとするが、銀の大きな両手が頬を押さえ、それを許してくれない。


押し入れられた銀の舌が私の舌を絡めると私の理性は粉々に砕け散った。


すれ違う人たちの好奇に満ちた視線など全く気にならないほど、私は夢中で銀を抱きしめていた。


そして、自らも熱い唇を求め目を閉じる。


銀……好きだよ。ずっと、ずっと、好きだった。


――どのくらい私たちはキスしてたんだろう……


虚ろな瞳で見上げた先には、ずぶ濡れになった銀の顔。離れたくなくて再び銀の胸に顔を埋めると彼の鼓動が微かに耳に響く。


「今日は、ここまで」

「えっ?」


顔を上げた私の額に軽くキスを落とすと銀はあどけない顔をして笑う。


「これ以上キスしてたら風邪引いちまう」

「銀……」

「なんだ? まだ足りないって顔してんな」

「な、何言ってんのよ! そんなこと……ない」


そんなこと……あるけど……


「まぁいい。俺は帰る。ミーメも早く戻れ」


爽やか過ぎる笑顔を残し、雨の中を駆け出して行く銀。私はその後ろ姿を呆然と見送っていた。


それはまるで、一夜の夢のよう。熱くて甘い雨の夜の出来事だった……


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