かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
だからこそ、何も知らない身の上ではある俺だけれど、秀斗が語ってくれる話には頷くところが多々あり、また、共感もできたのだ。

痛みを共有するのは難しいかもしれない。

けれど、共感することなら、あるいは可能なのかもしれないと、このとき俺は、そう感じた。


そうして、仲間たちのことや、ニュースには乗らない裏の被災地の顔、これから被災地が抱えるだろう幾多もの問題などを話し込んでいるうちに、辺りはすっかり夕暮れとなる。

暗い話に終始はしたものの、それでも俺は、秀斗がしっかりと仲間たちの消息を調べてくれ、それを、この耳できちんと聞けたことが何よりの収穫だったと感じていて、秀斗には改めて礼をしなければならないと強く思う。


できれば聞きたくない話ばかりだったし、みんな生きていると信じていたかったのが本音だ。

けれど、別れ際、どんなになっても俺たちは生きて現実を受け入れないとな……と話をし、秀斗は俺に「航に話せてよかった」と。

だいぶ無理はしているようだったが、最後には震災前のように優しく笑って見送ってくれた。





……けれど、秀斗の笑った顔を見たのは、この日が最後になってしまったのだ。
 
< 299 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop