かけぬける青空は、きっと君とつながっている
 
それを特別、不思議な関係だとか、変わっていると思ったことはないけれど、周りの子たちとと少し違うことは薄々分かってはいた。

例えば恋バナ。

ハルのことを話して「今どき携帯を持ちたがらない男の子なんている?」と言われたら嫌だったし、手紙のやり取りをしていることも、からかわれたら嫌だと思って、秘密にしていた。

だから、友だちとそういう話になったときも、「好きな人はいない」と嘘をついたりもした。


夏の間だけ“おばあちゃんの民宿”という空間で強まる関係というのは、たぶん話しても理解してもらえないんじゃないだろうか。

というのが、ハルを好きだと気づいてから、時間をかけてあたしが出した結論だった。


けれど……。

親友の明梨に話していれば何かが変わっていたかもしれない、そう思う気持ちも、今はある。


『菜月から手紙出してみなよ』

『菜月は携帯を持っているんだから、ハル君が持ったときのために、番号とアドレス、手紙に書いて送っちゃいなよ。喜ぶんじゃない?』


なんていうアドバイスを、親身になってしてくれたかもしれない。

……今となっては、もう遅いけれど。





「ーーちょっ、菜月!?」


そこまでの回想を終えたところで、慌てた様子の明梨の声で、あたしはハッと我に返った。
 
< 3 / 423 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop