かけぬける青空は、きっと君とつながっている
だいぶ通るようになってきた鼻で思いっきり空気を吸い込むと、こちらに向かって風が吹き上げてきているのだろう、その空気の中には、ほのかに海の匂いが混じっていた。
海辺の町特有の、磯の香り。
やっぱりあたしは、この町の空気が好きだ。
「……よし。しちゃおうか、掃除」
思いっきり空気を吸い込んだぶん、思いっきりそれを吐き出し、改めて2人に目を向けて言うと、2人はにっこりと微笑み、1階からめいめいに掃除用具を持って部屋に入り、3人で『潮風の間』の全てをピカピカに磨き上げた。
なにも、間宮さんがここにいた事実をきれいさっぱり消そうとしているわけじゃない。
“次”があるなら。
間宮さんがまた、この町に足を向けるようなことがあったら、そのときにはぜひ、この部屋を使ってもらえるように、ということだ。
「はぁ、綺麗になったね」
「だな」
「これでいつ間宮さんが来ても大丈夫だね」
いつになく念入りにした掃除を終えた頃には、あたしたちの額には大粒の汗が噴き出ていて、3人で「せーの」で『潮風の間』のドアを閉めると、おばあちゃんに麦茶をねだりに行った。
うん。
晩夏だけれど、今日も暑くなりそうだ。