部長とあたしの10日間
「───お前はまた余計なことを…」


部長がジロリと後藤さんを睨む。


「それもビール一杯でダメなくらい、致命的なやつ」


「嘘だ。
だってこの間の企画部の飲み会でも、部長が飲んでたの見ましたよ」


確かあのとき、遅れてきた部長に部の面々が代わる代わるビールをお酌してたはず。


「あぁ。
もしかして、隣に葛城がいたでしょ」


部長が不機嫌そうに顔を背けるのを尻目に、後藤さんはケラケラ笑いながら続ける。
確かに部長の隣に葛城主任はいた。
それを見て二人の関係を誤解したくらいだから、それは確かだけど。


「あいつ、底なしの酒のみでさ。
グラス渡せば何でも飲み干すから、叔父貴が飲み会に行くときは絶対隣に置いてるよね」


「そうなんですか?!」


じゃあ、あのとき部長のグラスを空にしてたのは主任だったってこと?
当たり前のように隣に座ってた裏には、そんな理由があったの?


そう言えば、お酒を飲んでた(ように見えた)のは始めだけで。
和田さんが二人の間に割り込んだあとは部長ってば煙草を吸いに席を立ってたっけ。


「この歳にもなって、酒が飲めないなんて恥ずかしいだろ。
ああいう場に参加せざるをえないときだけ葛城に無理言って頼んでるんだよ」


部長は言い訳するように首をすくめた。
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