部長とあたしの10日間
小泉部長をこんなに間近で見たのは、初めてだったかもしれない。


その鋭い視線に背筋がゾクッとする。
いい男だとは分かってるけれど、女に媚びる気の全くない目は少し怖い。


怯みそうになるのを堪えて、あたしがミーティングルームに視線を送ると、小泉部長は無愛想な顔のまま、やっとその重い腰を上げた。


部長と連れ立って歩いているとき、部長の斜め前のデスクに座った女性の視線に気付いた。


アフター5だというのに、髪型も服装も化粧も一切乱れた様子はない。
いつ見ても抜かりのない彼女の名前は、葛城サキ。
29歳にして企画部の主任。


業績を伸ばし続ける企画部で、女性である葛城主任が若くしてそんなポストに就けたのは、その美貌で部長に取り入ったから、なんて囁かれてるけど。


美人の方が何かと得なのだと証明するような葛城主任の生き方に、あたしは憧憬と仲間意識を連立して抱いていた。


そう、つい2日前までは。
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