部長とあたしの10日間
「やっぱりあの二人ってデキてるのかな?」


その言葉があたしの胸に深く刺さっているとも知らず、沙織は無邪気に言う。


「葛城主任には、和田さんより小泉部長みたいな大人の男の方がしっくりくるって言うか…」


「そんなはずない」


あたしは思わず沙織の言葉を遮っていた。
そのレスポンスの早さに自分で驚いたあたしは、不自然さに気付かれないよう、必死に取り繕う。


「だって。
もしそうなら、あたしが振られたのはなんだったのよ」


「───そりゃそうね」


「あんなの気にしないで行こ」


まだ腑に落ちない様子の沙織を引っ張るようにして、あたしは駅の改札へ向かう。


だけど、あの二人のことが一番気になってるのはこのあたしだ。
< 54 / 146 >

この作品をシェア

pagetop