部長とあたしの10日間
え…?


どのくらいで終わるんだ、って。
その問いかけにはどんな意図があるのだろう。
素っ気ない言葉の裏に隠れた真意を探ろうにも、ポーカーフェイスのこの男の考えは全く読めない。


この後、あたしを誘う気なのだろうか。
自分でもそう簡単には信じられないけれど、このシチュエーションでそんなふうに聞かれたらそうとしか思えない。


葛城主任はいいの?
ていうか、もし、万が一こいつにあたしを誘うつもりがあったとして、どう答えればいい?


すぐでもに終わらせられると言えば、誘って欲しがってるみたいでみっともないし。
余裕ぶって長い時間を答えて、こいつの誘う気を萎えさせてしまったら元も子もない。


ああ。
あたしとしたことが、こんなにまごつくなんて。


部長の真意が読めない以上、正直に答えるしかないという結論に辿り着いたあたしは、だけどあんまり喜んで答えて気持ちがバレるのも癪だからできるだけ平静を装って答えた。


「…あと1時間ぐらいですけど」


一体どう出る?
あたしは恐る恐る部長を見上げた。
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