部長とあたしの10日間
部長は一体、どういうつもりであたしを送ってくれてるのだろうか。


あたし自身さっき自覚したくらいなんだから、部長に気があることはまだバレていないだろうけど。
あたしの気持ちに気付いたら、部長はどう出るんだろう。


自分に気がある女なら、とりあえず一度は試してみるとか?
いやいや、それはないか。


あたしに手を出す程飢えてないって言ったけど、本当に家に送るだけのつもりなの?
あたしは恨めしげに部長を見る。


若い女を助手席に座らせておいて、何もしてこないなんて、それでも男だろうか。


手持無沙汰になったあたしが足元に視線を落として黙っていると、部長はちらっとあたしに目を向けた。


「どうした?」


「───女物の忘れ物があったらイジろうかな、と思ったんですけど」


部長は呆れた顔になると、溜め息混じりに言った。


「そんなのある訳ないだろ」


その言葉をどこまで信じていいのだろう。
本当のところ、葛城主任とはどういう関係なの?
知りたいけれど、現実を突き付けられるのが怖くてやっぱり怯む。
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