アンラッキーなあたし
「桜庭」

戦闘態勢のあたしを無視し、千葉があたしの顔に手を伸ばしてきた。

もうだめだ。

おもわずぎゅっと目を閉じる。千葉は顔を覆うあたしの髪の毛を指先でふんわりとかきあげた。

ああ、やめて、やめて。そんな処女の好きそうなシチュエーションに持ってくなんて反則よ!

指で髪の毛を梳かれる。
顎を無理やり持ち上げられる。
ベッド、或いは壁際に強引に押し付けられて逃げ道を阻まれる。

この三つは妄想女子の憧れる三大王道パターンなのだ。

「お前、化粧、すればいいのに。そうすりゃ彼氏なんてすぐに見つかるのに。お前って変なところに意地っ張りだよな」

残念そうに呟くと千葉はさっさと背中をむけて台所へ行ってしまった。そして、鍋の中を覗き歓喜の声をあげる。

「今日はサトイモのにっころがしかぁ。そそるぜー」

どうやらあたしは、サトイモにも負けるらしい。
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